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商圏分析 用語集
時系列分析とは、過去の時系列データから傾向を理解し、未来を予測するという手法です。時系列データの分析では“時間の経過に沿って記録された”データが対象になり、4つの変動要因(傾向変動、循環変動、季節変動、不規則変動)による変化の傾向を分析します。
商圏分析用GIS「マーケットアナライザー(MarketAnalyzer™)シリーズ」では現在のデータだけではなく、過去や将来の統計データを搭載することができるので地域/商圏単位で時系列分析を行うことができます。
表1の内、「②出店飽和の小商圏」の可視化でをおこなうためには、個々の店舗に対する買物行動を広域で網羅的に把握する必要があります。しかし、そのようなデータは残念ながら、存在しません。先の「人の流れデータセット」のような交通系データでも、そこまでミクロな行動を掴むことはできません。
そこで、商圏狭小化の状況を地区別に読み取るために、空間解析手法によって1店あたりの人口(商圏人口)を導き、店舗の飽和状態を推察しました。対象業界として、ドラックストアを選びました。データの入手性の面から、成長期以降の店舗網が拡大する様子を容易に観察することが可能だからです。
図1左をご覧ください。各年度別にドラッグストア全店舗の商圏人口を推定し、その平均と中央値とを示したものです。これによると、2006年頃までは、店舗の急増とともに小商圏化(オーバーストア化)は急速に進展してゆきます。その後、緩やかになり2009年以降は横這いで推移するようになります。
【表1 小商圏が語られる文脈】
つまりドラッグストア業界の小商圏化は、概ね2006年までにその急速な進行が完了した、と言えます。
つぎに、地区別の小商圏化の進行状況を商圏分析用GIS(地図情報システム)「マーケットアナライザー(MarketAnalyzer™)」を用いて示します(図1右)。店舗それぞれの商圏人口を算出した上で、近傍店舗の商圏人口を利用し、各小学校区別の店舗あたりの商圏人口を再推定することで、経時比較可能な形で図示化することができました。商圏人口が小さい地区は赤色、大きい地区は緑色で表しています。先ずは期間の前半(1997年から2003年)では、北関東での小商圏化が目立ちます。この地域を主戦場にした出店競争の激しさが窺えるようです。
【図1 ドラッグストアのオーバーストア化の進展】
その後小商圏化の波はじわりじわりと都心部、近郊部へと、移行します。時代とともに激戦区の場所が移動している様子が読み取れます。
図2は、小商圏化の進展状況を地図に表したものです。2000年から2009年にかけての商圏人口の減少数を示しています。ドラッグストアの商圏は、この10年間に首都圏の全域で縮小(商圏人口が減少)していると言えますが、商圏縮小の程度には、地域間格差が見られます。赤色の地区では激しく、緑色の地区では緩やかに小商圏化が進行しました。小商圏化が著しいのは山手線外縁部や横浜市街地です。
【図2 ドラッグストアのオーバーストア化の進展2】
これらの地域では従来型の薬局・薬店等の業種店が、ドラッグストアによって、急激に置き換えられていったものとみられます。こうした小商圏化の激戦区は、先の商業集積の小商圏の分布とは異なっています。これは、ドラッグストア業界に特有のパターンだと考えられます。業界それぞれに地域パターンは異なるはずです。
次に、ドラッグストアチェーンの各社が、小商圏化の進展に伴い、年々悪化する商圏環境の中で、どのような出店戦略を採ったのか、ということを見ていきます。この期間における各社の出店立地データを年度別に集計することで、出店戦略の経年変化を追うことができます。当初は、都心部が得意な企業、郊外部が得意な企業というように、各社それぞれが特色のある出店戦略を採っていました。その後、オーバーストア状況が進展するなかで、1.郊外型店舗から市場性豊かな近郊型店舗への動き、2.近郊型店舗から専門性(orオケージョン)特化型・繁華街店舗への動き、3.専門性特化型・繁華街型店舗から量販展開型・近郊型店舗への動き、という3方向のベクトルが混ざり合いながら、次第によく似た立地へと収斂してきているように見えます。
図2右は、そうした出店競争の様子を俯瞰的に示したデータです。商圏人口が年々減少する(右から左への移動)中で、各社とも、少しでも条件の良い立地(=商圏距離が長い立地:下から上への移動)を選択しようと努力している様子が読み取れます。
ドラッグストアにとって、商圏距離が伸びる(商圏が拡大する)立地というのは、国道16号線の外側で新たに開設されたショッピングセンターを除けば僅かです。それにも関わらず、有望な立地を獲得し続けるのは容易なことではありません。店舗開発における大変な労力と分析力が垣間見えます。