商圏分析 用語集

商圏分析 用語集

~基礎からトレンドまで~

ハフモデル

ハフモデルとは、1960年代に、米国の経済学者David Huff博士が考案したモデルで、ある店舗に消費者が買い物に出かける確率を、他の店舗との競合状況を考慮しながら予測するものです。消費者は、近くにある大きな店舗へ行くという一般的な傾向を前提にしており、ある店舗を選択する確率を、店舗の売場面積に比例し、そこまでの距離に反比例するとしています。店舗面積が広ければ広いほど消費者がその店舗を選択する確率が高くなり、距離が遠くなるほどその確率は低下するというモデル式です。

消費の多様化、新業態の店舗が増えている中で、商圏分析を行う際には、従来の売場面積と距離だけではなく、複数の要素を加味して、店舗や地域の魅力値を総合的に算出する必要があります。魅力値に影響する要素は、駐車場面積、営業時間、商品の価格、複合設備の有無、場所の利便性、交通ネットワーク、地域のブランド力、店舗のブランド力など様々な要素が考えられます。 「マーケットアナライザー(MarketAnalyzer™)」はグラビティモデル(オプション)で搭載可能です。



(関連用語はこちら)
売上予測 重回帰分析 グラビティモデル ライリーモデル ライリー・コンバースモデル

 

ハフモデル分析とは?

 アメリカの経済学者デービット・ハフ博士が考案した小売業の吸引モデルを計算するロジックで、国内では旧通産省が大店立地法を制定する際に用いたのがきっかけで商圏分析でも利用されるようになりました。古くからあるモデルですが、最近競合を加味した分析ができると注目されています。

ハフモデルの概念は図1の通りです。真ん中に家があり、周辺に店舗があります。どのお店にいくかの確率を求めますが、その要素は2つあります。1つ目は距離です。家と店舗との距離が近ければ近いほうに吸引されるというもの。もう1つは自社と競合店舗それぞれが持つ魅力値です。魅力値は同じ基準で測られた数値であれば良いのですが、過去より規模(店舗面積)が多く採用されます。近くて大きい店舗に吸い寄せられるということになります。

最近では、店舗の魅力をその大きさだけでは測れないので魅力値の設定方法も多彩になっています。

ハフモデル分析概念図

【図1:ハフモデル分析概念図】

ハフモデルの分析例

某ホームセンターの新規出店時の商圏調査を商圏分析用GIS「マーケットアナライザー(MarketAnalyzer™)」を用いて自主調査してみました。

◯出店前
出店前のハフモデルを用いた競合の勢力分布は図2となっています。メッシュ単位の色塗りはそれぞれの店舗への吸引率を表します。地図上の東西の走るオレンジ色の道路は国道で、この地域の太い導線となっています。出店前はこの道路を挟んで北側に2店舗、南側に1店舗立地しており、南側の店舗は国道の南側全域で地域一番店となっています。

出店前の既存競合店舗分布と勢力図

【図2:出店前の既存競合店舗分布と勢力図】

◯出店後
この国道と南側競合店舗の間に新規出店をしました。その結果の勢力変化が図3です。太い導線の国道からの流入を全て地域一番エリアとして獲得できそうだということがわかります。

出店後の既存競合店舗分布と勢力図

【図3:出店後の既存競合店舗分布と勢力図】

◯吸引世帯と吸引率
ハフモデルは地域ごとに自店や他店への吸引率を求める計算式です。今回は500m単位のメッシュごとに求めています。GIS(地図情報システム)にはメッシュ単位で人口や世帯などの様々なデータ項目を搭載しているので、メッシュごとの吸引率に世帯を掛け合わせて、商圏全体の獲得世帯をシミューレートしました(図4)。

出店前後の獲得世帯数と商圏内吸引

 【図4:出店前後の獲得世帯数と商圏内吸引】

ロイヤルホームセンター習志野店は、カインズ船橋習志野店が出店する前は、商圏内の吸引率は68%、獲得世帯数は170,047世帯でした。ところがカインズ船橋習志野店が出店した後は、吸引率と獲得世帯数が68%から39%に、170,047世帯から97,308世帯となり、カインズ船橋習志野店の42%、103,316世帯と逆転してしまうことがわかります。

このように、ハフモデル分析を用いることによって、商圏分析に競合という要素を加味することができます。

ハフモデルの限界

ハフモデルの計算は複雑ですが、GISに組み込まれているので分析作業自体はそんなに手間はかかりません。では実際に売上予測などの実務に使えるかというとそんなに簡単な話ではありません。ハフモデルの限界と述べましたが、分析を成功させるには、押さえておくべき3つのポイントがあります。

ハフモデル分析を成功させる3つのポイント

①魅力値の設定
ハフモデルでは魅力値と距離が分析要素と説明しました。「魅力のある店舗に人は引き寄せられる」という当たり前のことですが、自社と競合の両方の魅力を同じ基準で数値的に投入しなければいけません。これまで魅力値として売場面積が一般的に使われてきましたが、大きい店舗だけが良いという時代はとうの昔に終わっています。売場面積だけではなく、その他様々な要素が複合的に合わさって店舗の魅力が定義される時代です。様々な要素を投入しなければ精度が向上しないのです。また、売場面積や駐車場台数というような「量的変数」だけではなく、「質的変数」も店舗の魅力には大きく影響します。例えばコンビニエンスストアでは、同じ面積の店舗でもブランドによって大きく売上が異なります。業界1位と2位では日販が10万円以上も異なるのです。

②距離抵抗の考え方
「近いお店に引き寄せられる」というハフモデルのもう1つの分析要素ですが、お店に何を買いに行くかによって距離の重みが変わってきます。例えばタバコを買いに行こうと思った際、間違いなく最寄りのコンビニや販売店に行くでしょう。わざわざ電車にのって遠くの町のタバコ屋さんに行く人はいません。一方で、ファッションなど嗜好性の高い商品の場合には多少遠くてもお気に入りのお店やエリアに買物に行くと思います。服であれば何でも良いという訳ではありません。このようにそれぞれのシーンにおいて、距離という抵抗要素は変わってきます。

③トライ・アンド・エラーの必要性
新規出店時の商圏調査や売上予測を行う前に、まずは既存店でハフモデル分析を行うことをオススメします。売上実績がわかっている既存店でハフモデルを行うことによって、どのような魅力値や距離抵抗の設定が当てはまるかを試せるからです。逆に言えば、当てはまるように各種設定をトライ・アンド・エラーで試行錯誤する必要があります。

トライアンドエラーしやすい“進化系ハフモデル”対応
「MarketAnalyzer™」

当社のGIS(地図情報システム)「MarketAnalyzer™」は、ハフモデル分析の大きな手間となる各種パラメータ設定を詳細に行える「グラビティモデル」に対応。どの要因が売上に相関するのか、様々な異なる魅力値を繰り返しスピーディに検証できるため、探索的で高度な分析を容易に実現します。

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