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エリアマーケティングラボ
エリアマーケティング・商圏分析において、ターゲット像を定め地域をセグメントするデータの集計単位には、メッシュと町丁目が多く用いられてきました。しかしインターネットやスマートフォンの普及によって分析対象のデータの拡大が加速している昨今、郵便番号界単位で集計するケースが増加しています。データの粒度と情報の秘匿のバランスや、エリアの判定のしやすさによるものと思われます。 本コラムでは郵便番号界単位のデータの中から、TV番組やCMの視聴傾向を示すデータをご紹介します。
2019年8月2日号(Vol.95)
エリアマーケティングの目的のひとつに、販促エリアの最適化があります。店舗や施設への来店を誘導するための販促媒体を投下するエリアを、店舗からの距離やターゲットを示すデータから定義し、費用対効果を最大化するというものです。 販促エリアの最適化の場合、分析対象になる媒体は主に折り込みチラシやポスティングですが、販促媒体は他にもあります。「世界の広告費、19年はネットが4割に」という見出しで報じられた電通イージス・ネットワーク社の調査報告では、インターネット広告は全体の38.5%を占め、テレビ広告を初めて上回ったとのことです。インターネット広告に押されている感はありますが、テレビCMもいまだ多くの企業が採用している媒体です。いわゆるマス媒体というカテゴリとして定義されるだけに、小地域単位のエリアマーケティングとは無縁のように思われるかも知れませんが、TV番組やCMの視聴データも小地域単位、郵便番号界単位で分析できるようになっています。
ここでご紹介するのは株式会社インテージ(以下インテージ)のMedia Gauge® TV(メディアゲージティーヴィー)(https://www.intage.co.jp/service/platform/mediagauge-tv/)というデータベースです。 インテージは皆さんご存知の市場調査業界最大手の企業です。当社事例紹介セミナーでもゲスト講師として登壇いただきました。以下は本年開催したセミナーからの情報です。講演資料もご請求いただけますのでぜひご覧ください。
「生活者ログデータとエリア分析~生活者のインサイトを空間的に解析する~」
2019年3月実施
https://www.giken.co.jp/seminar-event/17301/
Media Gauge® TVは日本全国約120万台のスマートTVと約70万台の録画機を対象としています。エリアの粒度は都道府県単位だけではなく、郵便番号界単位での分析が可能です。本データの概要は以下の図をご覧ください。
スマートTVとは、従来のテレビにインターネットの機能を加えたものです。インテージによると国内のテレビの約7台に1台、新規購入の約2台に1台はインターネットに接続しているそうです。今後一般的なテレビの普及率に近づくと考えられています。インテージでは複数のメーカーと提携してリモコン機器の操作ログを収集・サマリーして視聴ログデータとして提供しています。
ではMedia Gauge® TVのデータをエリアマーケティングの観点からどのように活用できるのかを見ていきましょう。2018年12月31日の大晦日に1都3県エリアでNHKの「紅白歌合戦」を見ていた人が多い地域はどこかを地図上に可視化しました。
接触率という指標を用いて郵便番号界単位で色塗りをしました。緑色の濃い地域は紅白歌合戦の視聴が多いことを表します。都心から郊外に向かうほど高く、西部で特に高いことがわかります。
また、同時間帯に放映された日本テレビの「ガキの使いやあらへんで!」の接触率を可視化しました。
紅白同様に都市部は接触率が低いですが、北部(埼玉、千葉の郊外)で高い傾向が見て取れます。都市部の居住者は大晦日には自宅でテレビを見ない傾向があるのでしょうか。
「紅白とガキ使」の対比をもう少し鮮明にするため、居住者プロファイリングデータとマッシュアップしてみましょう。居住者プロファイリングデータとは、年齢・家族構成・住居形態・職業などのデータ項目から小地域を30分類した定性データです。ジオデモグラフィクスデータと呼ばれエリアマーケティングの基礎データとして活用されています。
※居住者プロファイリングデータについては下記をご参照ください。
(https://www.giken.co.jp/datalineup/pfd/resident/)
先ほど紅白とガキ使の接触率を地図上に可視化しましたが、紅白は西部、ガキ使は北部が高いという傾向でした。居住者プロファイリングデータの地図分布を見ると西部は黄色系、北部は赤系、青系、その他が混在しています。それぞれ代表的な地域コードを1コードずつピックアップしてご紹介します。
【西部の紅白エリア:コード24「子育てを終えた郊外型家族】
先の地図の西部に多く現れていた黄色いエリアの中に、コード24「子育てを終えた郊外型家族」という地域があります。この地域は人口の3.15%を占め、3人~5人家族が多く、世帯平均年収は400万~1000万と中~上程度で、50代~60代の持ち家一戸建てが多い傾向があります。
【北部のガキ使エリア:コード6「ガテン系ニューファミリー」】
こちらは北部に目立っていた青いエリアです。コード6「ガテン系ニューファミリー」という地域です。この地域は人口の5.66%を占め、3人~4人の核家族的な世帯人員が多く、年収は中程度、小さい子供を抱える30代~40代が賃貸住宅に居住する傾向がある地域です。
このように、マス媒体であるTVの視聴傾向には地域傾向が表れるというイメージを持っていただいたかと思います。地域傾向があるからこそ、TVCMによる広告やPRにも、エリアマーケティング分析が有効になってくるのではないでしょうか? ご興味いただけたらお気軽にお問い合わせください。
監修者プロフィール市川 史祥技研商事インターナショナル株式会社 執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント |
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医療経営士/介護福祉経営士 流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師 一般社団法人LBMA Japan 理事 1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。 |