技研商事インターナショナル技研商事インターナショナル
エリアマーケティングラボ
2024年12月18日号(Vol.120)
新規出店の候補地を選定する際や店舗の売上予測を立てる際、販促活動を行う前の事前準備の際には様々な調査をする必要があります。その中でも「商圏人口」を調べることはそれらの調査より正確に、効率的に行うための重要な鍵となります。 この記事では、商圏人口の調べ方や重要性を解説し、実際の企業を例に出した活用事例もご紹介します。
商圏とは、特定の店舗を日常的に利用する消費者の在住エリアや、店舗への来訪が見込めるエリアのことを指す言葉です。
そして商圏人口とは、その商圏に含まれるすべての人口を指しています。
商圏人口調査を実施することで、お店の周辺の人口構成や購買力などを知ることができるので、店舗開発や販促戦略立案のような業務を担う人にとって、商圏人口を知ることは非常に重要です。
商圏人口は時間帯によって大きく変化します。平日と休日では、人々の行動パターンが異なるため、商圏人口も大きく異なるのです。
平日人口は、主に仕事や学校に通う人が中心となり、オフィス街や学校周辺に集中します。
一方、休日人口は、観光や買い物、レジャーを楽しむ人が中心となり、繁華街や観光地、レジャー施設周辺に集中します。
そのため、出店場所によって、平日と休日のどちらの商圏人口を重視する必要があるのかを判断する必要があります。
例えばオフィス街に飲食店を出店する場合は、平日人口を重視する必要があります。逆に観光地に土産物店を出店する場合は、休日人口を重視する必要があります。
▼それぞれの特徴
平日・休日のように、夜間・昼間の人口動態もそれぞれ異なる場合があります。
例えば住宅街だと、夜間は主に居住者の人口が増え、昼間は外出や出勤によって人口が減少する傾向があり、オフィス街だとその逆の傾向が見られる場合が多いです。
このような情報をもとに、自社の業態に合わせて時間帯別の商圏人口がどのくらいかを把握しておくことが重要であることが分かります。
性別、年齢、職業、世帯収入など、属性による人口を示します。商圏におけるターゲット顧客層を明確にするために重要な指標です。
属性別商圏人口データに対する見解の持ち方として、例えば以下の用に行うことができます。
人口推移は、過去の人口動態データに基づいて、将来の人口予測を行う方法です。
商圏人口や商圏内の特性は刻々と変化しており、その推移は売上に影響する重要なデータとなります。商圏内の人口や特性によっては、現在の商圏ではなく別の商圏をターゲットとすべきであるという分析結果が得られる可能性もあります。
狙いたいターゲット層が既に明確になっており、その層が密集していると判断できるような、エリアを絞れている場合に実地調査は有効です。
時間と労力がかかるため、広範囲の調査を行うのは現実的ではなく、調査結果の精度も、調査員の経験や調査方法によって左右されるため、その点は注意が必要です。
▼実地調査のメリット
「行政要覧」を利用する方法もあります。行政要覧とは、各都道府県や市町村が発行している、その地域の概要や統計情報がまとめられた資料のことです。
行政要覧には、人口動態に関する情報が掲載されています。例えば、人口構成(年齢別、性別)、世帯構成、流入・流出人口など、地域の人口に関する詳細なデータなどです。
行政要覧は、無料で各都道府県や市町村のホームページからダウンロードできる場合が多く、図書館や役所などで閲覧することも可能です。
ただし、データの更新頻度が遅い場合があるため、最新の情報が必要な場合は注意が必要です。
※例:総務省統計局公式サイト>全国市町村要覧 令和4年版
国勢調査(こくせいちょうさ)とは、総務省統計局が主体となって行う国で最も重要な調査で、日本に住むすべての人(外国人を含む)が対象となります。統計法という法律に基づいて5年に一度データが更新されます。
国勢調査は、調査対象となる母集団全てを調査す『全数調査』のため、誤差なく正確な結果が得られる貴重なデータとなります。
なお、回答は法律により義務付けられており、インタネット回答の受付も始まった事から回答率が向上しており、最終的な網羅率は非常に高いとされています。
国勢調査の結果はインターネット上に公開されており、全国の年齢別人口、家族構成別の世帯数など、さまざまな情報が閲覧できます。都道府県別の統計や推移なども確認できるため、商圏人口の把握や将来的な推移の予測にも活用できます。
※総務省統計局公式サイト>「国勢調査」ページ
統計GISとは、統計データを地図上に表示することで、視覚的に分かりやすく情報を表現できるツールです。商圏人口調査においては、国勢調査や商業統計、各種調査データなどを活用して、人口分布や消費動向などを地図上に重ね合わせることができます。
▼統計GISのメリット
位置情報ビッグデータは、近年注目されている商圏人口調査の方法です。これは、個人の位置情報(GPS、Wi-Fi、携帯電話基地局など)を匿名化・集計したもので、人の移動や行動を分析することができます。
位置情報ビッグデータは、従来の調査方法では把握できなかった、時間帯や曜日ごとの人口動態、競合店舗への流入・流出状況などを把握することができます。また、属性情報(年齢、性別、職業など)と組み合わせることで、より詳細な顧客分析が可能になります。
位置情報ビッグデータは高精度でリアルタイム性が高く、広範囲のエリアをカバーしているというメリットがあります。
技研商事インターナショナルでは、KDDI社保有の、auスマートフォンから得られるGPSの位置情報、属性(性別・年代)情報を基に、公的人口統計を参照して拡大推計処理された人口データをご提供しています。
▶位置情報データの料金や詳細のお問い合わせはこちら
人流分析ツールは、GPS位置情報データから人の移動状況を分析するツールです。店舗周辺の通行量や滞在時間、移動方向などを把握でき、商圏エリアの人口動態をより詳細に把握することができます。
ツールを利用せず位置情報ビッグデータや統計データを各所からダウンロードや購入し、自力で分析する方法もありますが、難易度が高く都度データを取り寄せる必要があるためスムーズに進めづらい難点があります。
人流分析ツールのなかでもサブスク型のものを選んで導入することで、いつでもどこでも何度でも、気になる店舗やエリアの人流がすぐに分析できます。
商圏人口の調査により、出店予定地の周辺住民とその特徴を把握することで、自社の商品やサービスに対する需要を予測し、より需要がありそうなエリアに出店することが可能になります。
例えば、出店エリアの年齢層や所得水準、家族構成、職業などを調べれば、ターゲットとなる顧客層を絞り込みやすくなります。 また、競合店舗の有無や規模、周辺施設の状況なども把握することで、出店後の競争環境を予測し、事業戦略を立てやすくなります。
特定のエリアの年齢、性別、職業、収入などの属性情報を把握することで、ターゲットとなる顧客層のニーズや特徴を理解することができます。
具体的には、ターゲットとなる顧客層の年齢層を知ることで、商品やサービスの開発、広告戦略を具体的に検討することができます。
性別によって消費行動が異なるため、商品の開発やマーケティング戦略に活かすことができます。また、職業によって収入やライフスタイルが異なるため、商品やサービスの価格設定や販促活動に活かすこともできます。
競合店舗とは、同じ商圏内で同じような商品やサービスを提供している店舗のことです。
競合店舗の状況を把握したら、強み、弱み、機会、脅威、等の観点で分析します。
この結果をマーケティング戦略に活用すると、例えば以下のようなことができます。
•差別化戦略: 競合店舗との差別化を図る。
•価格戦略: 競合店舗よりも安い価格で商品を提供する。
•サービス戦略: 競合店舗よりも優れたサービスを提供する。
•プロモーション戦略: 競合店舗よりも効果的なプロモーションを実施する。
例えば技研商事インターナショナルのGIS「MarketAnalyzer® Satellite」を使うと、数クリックで以下のように地図上で競合店舗の調査をすることができます。
売上予測は、新規出店の可否を判断し、マーケティング施策の効果を検証する上で重要な指標となります。周辺住民の購買力や需要を分析することで、ある程度精度の高い売上予測が可能となります。
▼売上予測の一般的な手順
具体的な施策の効果測定や顧客動向の分析を行うことで、施策の改善点や今後の戦略立案に役立てることができます。
▼マーケティングや販促施策への活用例
・チラシやDMの効果測定
ターゲットとなる顧客層を事前に把握することで、その効果をより正確に測定することができる。
・イベントの効果測定
イベント開催前に商圏人口調査を行い、イベントへの集客効果を予測することができる。また、イベント後に調査を実施することで、実際にどの程度の顧客が参加したのかを把握できる。
小売業では、新規出店候補地の検討、潜在顧客の分析、競合店舗の把握、売上予測、マーケティング・販促施策の効果検証などに活用できます。
商圏人口データの活用によって、出店戦略やマーケティング戦略の精度を高め、ビジネスの成功確率を向上させることができます。
▼株式会社東武ストア様:実際の活用事例はこちら
飲食業においては、ターゲットとなる潜在顧客のボリュームや特性を把握し、効果的なメニュー開発やマーケティング戦略を進めることができるほか、競合店舗の状況把握にも役立ち、自店の強み弱みを明確化し、差別化戦略を立てることができます。
過去の売上データと組み合わせることで、出店後の売上を予測し、出店計画の妥当性を判断したり、必要な資金を算出したりすることもできます。
▼株式会社プレナス様:実際の活用事例はこちら
潜在顧客の居住地や通勤・通学ルートを把握し、路線計画を最適化することができます。
人口密度が高い地域への路線を増設したり、アクセスしやすい駅への乗り換えを容易にすることで、利用者の利便性を向上させ、売上増加につなげることができます。
また、料金体系の検討にも役立ちます。人口密度が高い地域では、定期券や回数券などの割引制度を導入することで、利用者の獲得につなげることができます。
▼小田急電鉄株式会社様:実際の活用事例はこちら
大学の研究機関で、都市や地域計画の分析事例調査の一環として商圏人口調査が行われるケースもあります。
大阪大学様の建築・都市人間工学領域における論文では、人流分析ツールを活用した商圏人口の分析事例をご覧いただけます。
論文タイトル:「コンパクトな都市圏形成に向けたニュータウンに隣接して開発された従業地の役割とは何か?|京阪神大都市圏を対象とした従業者特性と居住地分布の分析より」
▼大阪大学様の論文はこちらからご覧いただけます。
大和証券株式会社様では、弊社の顧客である保険会社やヘッジファンド等のプロの機関投資家向けに経済情報を発信するため、人流データを活用して投資判断に役立つ経済や景気の動向や予測を分析されています。
▼大和証券株式会社様:実際の活用事例はこちら
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監修者プロフィール市川 史祥技研商事インターナショナル株式会社 執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント |
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医療経営士/介護福祉経営士 流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師 一般社団法人LBMA Japan 理事 1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。 |