エリアマーケティングラボ

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~業界の最新動向~

興味関心データを用いたターゲット地域の策定

これまでのエリアマーケティングでは分析が困難だった生活者の興味・関心という軸を取り入れることができるようになりました。
>今回のマンスリーレポートでは、この興味・関心を示す小地域単位の統計データを使った分析事例をご紹介します。

月刊GSI 2018年1月号(Vol.79)

背景

 これまでエリアマーケティング分析で活用されてきたのはジオデモグラフィクスデータ、つまり国勢調査データや経済センサスなどの公的な統計データ(センサスデータ)や、公開されている複数の統計表を用いて推計した年収や消費支出といった生活者の基本的な属性データでした。

 広告プランニングで主流だったのは、性・年代別や家族構成、年収階級などからターゲット像の仮説を立て、プロモーション施策を実施し、得られたレスポンス情報から新たな施策につなげるPDCAサイクルを回すことでした。しかし、センサスデータの統計情報だけでは必ずしも生活者の嗜好性を捉えることはできません。また統計によっては5年に1度の調査などもあり、満足のゆく更新頻度とは言えませんでした。

 そこで2017年11月21日にリリースした「AudienceOne® 統計データ for エリアマーケティング」を使用すれば、これまでのエリアマーケティングでは分析が困難だった生活者の興味・関心という軸を最新のデータを基に取り入れることができるようになりました。今回のマンスリーレポートでは、この興味・関心を示す小地域単位の統計データを使った分析事例をご紹介します。

興味関心を表すエリア統計データとは?

 当社とデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下DAC)が共同開発した「AudienceOne® 統計データforエリアマーケティング」は、独自アルゴリズムを活用した郵便番号単位の居住者判定技術に、月間4.8億ユニークブラウザのオンライン行動データを解析した興味・関心データを組み合わせ、データ量と更新性を確保したものです。

 インターネット上の膨大なデータ(ビッグデータ)から消費者の嗜好性(興味・関心)をカテゴリー別に細分化し、郵便番号界ごとに分析できるようにした統計データです。

【AudienceOne® 統計データ for エリアマーケティング】

不動産業界での活用事例

 実際に「AudienceOne® 統計データforエリアマーケティング」を分析に使用した事例をご紹介します。東京近郊を対象に「戸建て住宅」のDMを送るエリアを選定した事例です。

◯戸建住宅のターゲットエリア選定

 これまでのエリア選定では、「戸建住宅」を求める顧客像の仮説を立て、「30~40代人口数」、「借家世帯数」の高い地域を抽出していました。

【30~40代人口×借家世帯数のクロス分析】

 上の地図は都心近郊で「30~40代人口数」×「借家世帯数」を郵便番号界単位で可視化したものです。濃い赤色のエリアは30~40代人口と借家世帯数がともに多く、ターゲット層が多いということを表しています。このエリアを郵便番号別・町丁目別に抽出・ランキングし、DM配布エリアの選定に使用します。

 では、この結果に「AudienceOne® 統計データforエリアマーケティング」を分析の軸として加えるとどうなるでしょうか。今回は「戸建住宅」がテーマですので、収録されている約900カテゴリーの内、「戸建」カテゴリーのデータを用いて、どの地域で戸建住宅への興味・関心が高いかを地図から検索します。

【30~40代人口×借家世帯数×戸建住宅への興味関心のクロス分析】

上の地図の青い網掛けのエリアが「戸建」カテゴリーへの興味・関心の高いエリアです。JR・各私鉄などの沿線に関心の高い層が多いことがわかります。このように統計データだけで抽出したエリアと興味・関心度合いで抽出したエリアを総合的に検討することで、精度の高いターゲティングが可能になります。

◯戸建てか賃貸か?

 他にも、不動産カテゴリーの中には様々な項目が収録されており、「注文住宅」や「マンション」、「高級マンション」、「賃貸」、「住宅ローン」等があります。そこで「戸建」カテゴリーと「賃貸」カテゴリーを比較してみます。

【「戸建」カテゴリヒートマップ】

【「賃貸」カテゴリヒートマップ】

 2つのヒートマップを比較すると、練馬区、中野区、杉並区、三鷹市周辺で「戸建」と比較して「賃貸」カテゴリーへの興味・関心が高いことがわかります。こういったエリアでは、賃貸住宅に加えて引越しやインテリアの買い替えなどの需要も高いと予想することができます。

 また下の地図は、「戸建」「賃貸」の2つのカテゴリーをクロス分析した結果です。やはり、杉並区や練馬区、三鷹市、葛飾区周辺では「賃貸」住宅への興味・関心が高いことがわかります。

【戸建×賃貸のクロス分析】

まとめ

 このように、従来のデモグラフィクス情報だけでなく、消費者の嗜好性(興味・関心)を加味して分析を行うことで、よりエリア選定の精度を高めることができます。今回は「不動産」をテーマにした分析結果をレポートしましたが、「AudienceOne® 統計データ for エリアマーケティング」は、他にも自動車・金融・健康など約900のカテゴリーを収録しております。

 消費者の購買チャネルも多様化し、ネット通販が伸びている現在ですが、リアル店舗で利用される折込チラシやDM、ポスティングなどの販促媒体は決してなくならないでしょう。ただし、これまでと同じ施策では顧客離れを食い止め、新規顧客を獲得していくことは困難です。そこでオンラインで蓄積したデータを活用することで、消費者の嗜好性とリアルタイム性を考慮した、これまで実現できなかったより精度の高いプランニング、施策の実行につなげることができると考えています。


監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
医療経営士/介護福祉経営士
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。


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