エリアマーケティングラボ

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市場分析とは?その意味と代表的な7フレームワークや思考方法を紹介

2025年2月27日号(Vol.131)

はじめに

購買チャネルと消費者の趣味趣向が多様化し、コロナ禍をきっかけとして生活者のライフスタイルも変化している現在、ますます競争激化するビジネス・市場環境において、市場ニーズの把握と市場分析が不可欠です。
本コラムでは、市場調査や市場分析の基礎知識から、役に立つフレームワークの紹介と、実践的な実施手法までをわかりやすく解説します。



市場調査とは?その重要性

市場調査とは、ビジネスの意思決定を支援するための情報を収集、分析、解釈する体系的な方法です。企業は市場調査を通じて、顧客のニーズや嗜好、競合他社の状況、市場動向などを理解することができます。市場調査は、新製品開発、マーケティング戦略の立案、事業拡大、潜在的なリスクの早期発見など、さまざまな場面で活用され、適切な対策を講じるために行うマーケティングプロセスの一つです。

市場調査には、大きく分けて一次調査と二次調査の2種類があります。一次調査は、アンケート調査やインタビュー調査、観察調査など、調査主体が独自にデータを収集する調査方法です。一方、二次調査は、政府統計や業界団体資料、書籍や雑誌など、既に公開されているデータを利用する調査方法です。

市場調査イメージ2

これらの市場調査によって得られたデータを様々なフレームワークに基づいて分析することにより、自社の現状やポジショニングを発見し、競争優位性を獲得し将来の見通しを立てていきます。




市場調査の基本的な実施方法

市場調査の基本的な実施方法は、以下のステップに分かれます。
1. 目的の設定
2. 適切な手法の選択
3. フレームワークを活用した分析


市場調査のステップ1:目的を設定する

市場調査の実施にはいくつかのステップがあり、その最初のステップは明確な目的を設定することです。目的を設定することで、調査の範囲を絞り込み、必要なデータの収集に集中することができます。
市場調査の目的は、例として以下のようなものが挙げられます。

• 新規市場への参入可能性を評価する
• 競合他社の分析
• 顧客ニーズの調査
• 製品開発のためのアイデアの収集
• マーケティング戦略の策定

市場調査のステップ2:適切な手法を選択する

市場調査において、適切な手法を選択することは、正確な情報を収集し、効果的な分析を行うために重要です。 ここでは、市場調査のステップ2として、さまざまな手法の中から自分に合ったものを選択する方法についてご紹介します。

1. 目的に合わせた手法を選択する:
市場調査の目的によって、適した手法は異なります。 例えば、消費者の好みやニーズを把握するためには、アンケート調査やインタビュー調査が有効です。 一方、市場規模や既存のデータや文献調査が役立ちます。市場占有率やエリア調査であれば商圏分析という方法もあります。

2. 予算と時間に合わせて選択する:
市場調査には、さまざまな手法があり、それぞれに費用や時間がかかります。 例えば、大規模なアンケート調査は費用と時間がかかりますが、より多くのサンプルを集めることができます。 一方、少人数のインタビュー調査は費用と時間が抑えられますが、サンプル数が少なく、結果が偏る可能性があります。

3. 専門家の意見を参考にする:
市場調査に不慣れな場合は、専門家の意見を参考にすることをおすすめします。 市場調査会社やコンサルティング会社は、豊富な経験と知識に基づいて、調査手法の選択や調査の実施をサポートしてくれます。

市場調査のステップ3:フレームワークを活用した分析

フレームワークとは、市場調査を効果的に進めるための思考の枠組みです。様々なフレームワークが存在し、目的に応じて活用することができます。
フレームワークを活用することで、市場調査の結果を体系的に整理し、より深い洞察を得ることができます。また、フレームワークは、社内外での共通言語となり、その調査結果に基づいて戦略を策定する際にも役立ちます。
次に、代表的な7つのフレームワーク・思考法を紹介していきます。




市場調査に役立つ7つのフレームワーク

市場調査を効果的に実施するためには、様々なフレームワークを活用することが重要です。
ここからは、市場調査に役立つ7つのフレームワークを紹介します。 これらのフレームワークを組み合わせることで、市場調査・市場分析をより効果的に実施することができます。


3C分析

3C分析は、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの要素を分析し、市場における自社の立ち位置を明確にするフレームワークです。顧客ニーズをしっかり理解し、競合他社との差別化を図り、自社としてどこに経営資源を集中させるかを判断する軸です。比較的シンプルなフレームワークであるため、市場分析の初心者にもおすすめです。また、3C分析は他のフレームワークと組み合わせることもできるため、さまざまな場面で活用することができます。

3Cイメージ

■ 3C分析で分析する項目

顧客:顧客層の特性、顧客ニーズ、顧客満足度、顧客ロイヤルティ
競合:競合他社の市場シェア、競合他社の強み・弱み、競合他社の製品・サービス、競合他社のマーケティング戦略
自社:自社の強み・弱み、自社の製品・サービス、自社のマーケティング戦略、自社の経営資源

PEST分析

PEST分析は、政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの要素を分析し、外部環境の変化を捉えて市場への影響を予測するフレームワークです。自社というよりも外部環境をマクロ的な視点で分析するもので、将来のトレンドを予測するのにも役立ちます。

■ PEST分析で分析する項目

政治的要因: 政治的安定性、政府の政策、規制など。
経済的要因: 経済成長率、インフレ率、金利、為替レートなど。
社会的要因: 人口動態、ライフスタイルの変化、価値観の変化など。
技術的要因: 新技術の開発、技術革新のスピード、インターネットの普及など。

SWOT分析

SWOT分析は、数あるフレームワークの中でも広く知られ、活用されている代表的なフレームワークの一つです。自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Thread)を分析し、競争優位性を把握して戦略策定に役立てるフレームワークです。自社の状況と外部要因から現状を把握します。
SWOT分析イメージ

■ SWOT分析の手順

1. SWOT分析表を作成する
2. 自社の強み、弱み、機会、脅威を洗い出す
3. 洗い出した内容をSWOT分析表に記入する
4. 分析結果をもとに戦略を立てる

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析は、マイケル・ポーターが提唱したフレームワークで、新規参入の脅威、代替品の脅威、供給業者の交渉力、買い手の交渉力、既存企業間の競争という5つの要因を分析し、業界の競争構造を理解して自社の収益性やその向上力を分析するものです。

■ ファイブフォース分析の5つの要因

1. 既存の競合企業からの競争
業界内の既存の競合企業の数や規模、競合企業の戦略や強みなどを分析します。競合企業が多い、競合企業が規模が大きく、かつ強固な戦略を持っている場合、新規参入は困難となります。

2. 新規参入の脅威
新規参入の障壁が低く、新規参入が容易な業界は、競争が激化しやすくなります。新規参入の障壁としては、参入コスト、政府規制、ブランドロイヤルティなどがあります。

3. 代替品の脅威
顧客にとって、既存の製品やサービスの代わりに使用できるような代替品が存在する場合、既存企業にとって脅威となります。代替品の価格が安価であったり、性能が向上している場合、顧客は代替品に流れてしまう可能性があります。

4. 買い手(顧客)の交渉力
買い手の数が少なく、購買力が大きい場合、買い手は価格交渉力や納期交渉力を強めることができます。買い手の交渉力が強い業界では、企業は利益を圧迫される可能性があります。

5. 売り手(供給者)の交渉力
供給者の数が少なく、供給力が大きい場合、供給者は価格交渉力や納期交渉力を強めることができます。供給者の交渉力が強い業界では、企業はコスト上昇のリスクにさらされます。

4P分析

4P分析は、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)の4つの要素を分析し、どんな商品を、いくらでどのような流通経路に乗せ、宣伝し、顧客に届けるかを整理するマーケティング戦略を立案して実行するために役立てるフレームワークです。
4P分析

■ 4P分析で分析する項目

製品 価格
• 製品の特徴や機能
• 品質やデザイン
• ブランドイメージ
• 競合製品との差別化ポイント
• 価格設定
• 割引や値引き
• 競合製品の価格
• 顧客の価格に対する反応
流通 販売促進
• 流通チャネル
• 販売ルート
• 流通コスト
• 販売店の立地
• 広告宣伝
• PR活動
• 販売促進キャンペーン
• 顧客とのコミュニケーション

ランチェスター戦略

ランチェスター戦略は、20世紀初頭に英国の物理学者フレデリック・ランチェスターによって提唱された戦略理論です。もともとは軍事戦略として生まれた理論ですが、現在では経営学やマーケティングの分野でも広く活用されています。
自社と競合他社の戦力を比較し、勝利するための戦略を立案するフレームワークで、弱者(中小企業)が強者(大手企業)に打ち勝つために、差別化された製品をニッチ市場を狙い、そこに経営資源を一点集中する戦略です。
ランチェスター戦略では、戦力と消耗という2つの要素が重要視されます。戦力とは、自社や競合他社の持つ資源や能力のことです。消耗とは、戦力を行使することで発生する損失のことです。戦力の優位性と消耗の最小化を追求することで、競争に勝利することを目指します。戦力の優位性とは、競合他社よりも多くの戦力を投入できる状態のことです。消耗の最小化とは、戦力を無駄遣いせずに効果的に使う状態のことです。
ランチェスター戦略イメージ

【ランチェスター戦略のイメージ(一部)】


コアコンピタンス

コアコンピタンスは、自社が持つ他社に真似できない、または真似されにくい「核(コア)」となる能力であり、競争優位性を構築して持続的な成長を実現するために重要な要素です。自社の核が、長持ちするか/真似できないものか/希少性があるか/代替手段がないかという軸で検討していきます。具体的な例は以下の通りです。

■ コアコンピタンスの例

• 技術力
• ブランド力
• ノウハウ
• 顧客基盤
• 規模



市場調査の効率的な進め方

市場調査は、事業の成功に欠かせない重要なプロセスです。しかし、調査方法が適切でないと、時間がかかり、費用がかさむばかりで、有益な結果を得られない可能性があります。そこで、具体的な調査に入る前に、まず最初に行っておくべきポイントを2つ紹介します。

市場調査のポイント1:市場規模の推定

市場規模とは、ある市場において一定期間に取引されるすべての製品またはサービスの売上高を指します。市場規模は、市場調査において重要な指標であり、市場の規模感や成長性などを把握するのに役立ちます。
市場規模の推定方法は、大きく分けて2つに分類されます。

• トップダウン方式:
この方法は、まず市場全体の規模を推定し、その後、市場をセグメントに分けて、各セグメントの市場規模を推定します。市場全体の規模は、政府統計や業界団体などのデータから推定することが多いです。

• ボトムアップ方式:
この方法は、まず市場を構成する個々の消費者の需要量を推定し、その後、すべての消費者の需要量を合計して市場規模を推定します。個々の消費者の需要量は、アンケート調査や購買データなどのデータから推定することが多いです。

どちらの方法を選択するかは、市場の特性やデータの入手可能性などによって異なります。また、両方の方法を組み合わせて市場規模を推定することも可能です。
市場規模の推定には、様々な方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。市場規模を正確に推定するためには、複数の方法を組み合わせたり、専門家の意見を参考にしたりすることが重要です。

市場調査のポイント2:商圏分析

商圏とは、消費者が購買のために訪れる地域のことで、商圏分析はその地域を様々なデータで分析、理解し、市場規模の推定をしたり、潜在需要を把握したり、ターゲットエリアを定めたりする重要な分析の観点です。
データの収集・分析には、 GIS(地理情報システム)を利用使用することが一般的です。現在では様々なGISツールが存在します。基本的で低価格のサービスから、高度で複雑な分析ができるものまで揃っており、中には無料で利用できるものもあります。




まとめ:市場調査を効率的に進めるためのフレームワーク活用

市場分析はビジネスにおいて重要なプロセスであり、フレームワークを利用することでより効率的に進めることができます。フレームワークとは、市場調査の手順や視点などを体系的に整理したもので、市場分析の目的や状況に応じて適切なフレームワークを選択することで、調査の効率化と分析の精度向上を図ることができます。
また市場調査の方法として、市場規模の把握とGISによる商圏分析は重要な観点となっています。

■(関連コラム:入門編)「商圏分析とは?重要性や実施時のポイント・おすすめツールを紹介」
 →詳細はこちら

■(関連コラム:実践編)3つのショッピングセンターの比較分析
~商圏構造の差と出店前後の勢力図の変化を知る(予測から実践まで)~

詳細はこちら

■(用語集)GISとは
 →詳細はこちら


< GISによる商圏分析・エリアマーケティング 参考資料のダウンロード >
資料1「チェーン企業の店舗分析に新たな気づきをも足らずジオデータ活用術」(DX実践向け)
資料2「店舗開発で成果をあげる商圏分析ガイドブック」(ビギナー向け)

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https://www.giken.co.jp/materials/

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監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
医療経営士/介護福祉経営士
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。




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