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エリアマーケティングラボ
2025年1月15日号(Vol.126)
北海道は雄大な自然、新鮮な食、そして独自の文化で、国内外から多くの観光客を魅了し世界各国から訪日旅行の目的のひとつとなっています。本記事では、北海道のインバウンド需要をデータに基づいて徹底解説し、訪日外国人観光客数や消費動向、人気スポット、そして今後の展望まで網羅的にご紹介します。
注目ポイントは、北海道を訪れる訪日外国人観光客数の推移と特徴、コロナ前と最新状況の比較、位置情報ビッグデータから見るインバウンド観光、北海道のインバウンド対策の現状と展望、2025年に注目の北海道観光スポット情報です。
この分析を通して、北海道のインバウンド需要の現状と将来性を探り、今後の観光振興戦略のヒントを得ましょう。
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北海道は、日本の中でも有数の観光地として知られています。近年では、インバウンド需要が高まっており、訪日外国人観光客数も増加傾向にあります。
北海道のインバウンド需要を知るためには、客観的なデータが欠かせません。本記事では、国が発表する訪日外国人の各種統計データと、訪日外国人が利用するスマホアプリから取得する位置情報データをもとにた情報をご紹介していきます。
そもそも、北海道のインバウンド需要が伸びている要因として、以下のような点が挙げられます。
• 円安による旅行コストの低下
• 北海道への直行便の増加
• 北海道の魅力的な観光資源
北海道のインバウンド需要は今後も伸びることが予想されますが、同時に課題も存在します。
• 観光客の増加に伴う環境負荷
• 観光資源の整備不足
• 訪日外国人旅行者のニーズに合わせた観光サービスの提供
これらの課題を解決することで、北海道のインバウンド需要をさらに拡大することが可能となるでしょう。
訪日外国人観光客数に関する統計データは、インバウンド需要を理解する上で重要な情報源となります。政府や自治体は、様々な統計データを公開しており、それらを活用することで、北海道のインバウンド需要の概況や訪日外国人旅行者数の推移を把握することができます。これらのデータは、訪日外国人の国籍、滞在目的、年齢、宿泊施設タイプ、旅行形態、旅行期間、消費動向、満足度などを把握することができ、インバウンド需要の把握や適切な観光政策の立案に活用されています。
主な統計データには、以下のようなものがあります。
• 宿泊旅行統計調査:訪日外国人・日本人の宿泊旅行の実態を、宿泊施設を対象として毎月観光庁が調査。
• インバウンド消費動向調査: 訪日外国人の消費動向を調査。四半期ごとに観光庁が実施。(旧名称:訪日外国人消費動向調査)
• 訪日外客統計:日本を訪れる外国人旅行者の人数推移を国別、年別、月別の他、目的別(訪日理由)でも発表。日本政府観光局(JNTO)が実施。
これらの統計データは、北海道のインバウンド戦略の策定や観光施設の整備など、様々な施策に活用されています。それぞれ北海道旅行に絞ってデータで取得し、グラフや表にして自身で分析することも可能です。
参考:
• 宿泊旅行統計調査: https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shukuhakutokei.html
• インバウンド消費動向調査: https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/gaikokujinshohidoko.html
• 訪日外客統計:https://statistics.jnto.go.jp/
訪日外国人旅行者数は、2019年(コロナ前)に過去最高の3,188万人を記録し、インバウンド需要は活況を呈していました。しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行により、訪日外国人旅行者数は大幅に減少しました。2021年は24万5000人、2022年は383万人と、2019年と比較して大幅に減少しました。
2023年に入ると、水際対策の緩和により、訪日外国人旅行者数は徐々に回復傾向にあります。2023年1月~12月の訪日外国人旅行者数は2,500万人となり、2022年同時期と比較して5.5倍に増加しました。
※出典:日本政府観光局(JNTO)「日本の観光統計データ」(2024年12月19日時点)※2024年は1月~9月までの暫定値。
今後のインバウンド需要の回復には、新型コロナウイルス感染症の感染状況や水際対策の動向が大きく影響すると考えられます。政府は、2023年10月11日から、ビザなし渡航を認める国の範囲を拡大するなど、インバウンド需要の回復に向けた取り組みを進めています。
• ビザなし渡航を認める国の範囲の拡大
• 訪日外国人旅行者向けの観光プロモーションの実施
• インバウンド需要に対応した観光施設やサービスの整備
• 訪日外国人旅行者の安全性確保のための対策
政府は、これらの取り組みを通じて、インバウンド需要の早期回復を目指しています。
北海道は、日本の中でも人気の観光地の1つであり、世界中から多くの観光客が訪れています。都道府県別の割合を見ると、北海道に来る訪日外国人の割合は2019年(コロナ前)には8%で、2023年では6.1%です。まだまだ東京都52%、大阪府39.6%と東京大阪に集中しているので、北海道への訪日外国人旅行の伸びしろはあると言えるでしょう
(出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」)
現状の想定課題として以下が挙げられるかと思います。
• 地理的な要因:北海道は本州から離れており、アクセスしづらいという地理的な要因があります。
• 知名度の低さ:北海道は海外からの知名度が低く、観光地として認知されていないという要因があります。
• 観光資源の不足:北海道は観光資源が豊富ですが、他の地域と比較すると知名度が低い観光資源が多いという要因があります。
北海道の外国人観光客訪問率を向上させるためには、以下の対策が必要だと考えられます。
• アクセス改善:北海道へのアクセスを改善することで、外国人観光客にとって行きやすい地域にする必要があります。
• 知名度向上:北海道の海外からの知名度を向上させることで、観光地として認知してもらう必要があります。
• 観光資源の整備:北海道の観光資源を整備することで、外国人観光客にとって魅力的な観光地にする必要があります。
北海道の外国人観光客訪問率は、他の地域と比較して低い水準で推移していますが、対策を講じることで向上させることが可能です。
今後、北海道はさらにインバウンド需要を取り込むために、様々な取り組みを行っていく予定とのことです。これらの取り組みには、訪日外国人観光客向けの観光情報を充実させることや、訪日外国人観光客に対応できる施設やサービスを増やすことが含まれます。
北海道は、訪日外国人観光客にとって魅力的な旅行先であり、今後も北海道を訪れる訪日外国人観光客の数が増加していくことが期待されます。
最新2023年のデータで北海道に宿泊する訪日外国人を国籍別に見ていきましょう。
北海道を訪れる外国人観光客数はコロナ禍を経て回復傾向になると前の章でお伝えしましたが、消費金額の面でも同様の傾向が見られます。
日本国内全体では、2019年7月-9月期の訪日外国人の旅行消費額は1兆1,818億円で、2,021年7月-9月期の速報だと1兆9,186億円となっており、コロナ禍前の水準を大きく上回っています。
(出典・観光庁「インバウンド消費動向調査」)
北海道の外国人旅行客の現状をデータで読み解く際、これまでご紹介した政府等が発表する公的統計を利用するのは基本ではありますが、タイムリー性に欠けるデメリットもあります。
ここ数年で地域分析や観光振興、企業のエリアマーケティングにおいてGPS位置情報を用いた分析も定着してきており、専門家に調査を委託することなく、いわゆるセルフ分析式の分析ツール(GIS:地図情報システム)も登場しています。位置情報ゆえに数日前のデータが取得でき、まさしくタイムリーな動向を把握することができます。
ここからは位置情報データから、札幌市、小樽市、函館市に絞って、訪日外国人の滞在エリアや国別傾向を見ていきます。
※データ出典、利用分析ツール:KDDI Location Analyzer https://www.giken.co.jp/service/kla/
上の表は2024年1月1日~12月31日までの1年間に札幌市に訪れた訪日外国人を国別に構成比で表したものです。韓国、中国、台湾、香港の東アジア勢で全体の約7割を占めています。
赤色系は東南アジア、緑系は北米、青系はヨーロッパを表しています。
上の表は2024年1月1日~12月31日までの1年間に小樽市に訪れた訪日外国人を国別に構成比で表したものです。札幌市と傾向としては同様で、韓国、中国、台湾、香港の東アジア勢で全体の約7割を占めています。赤色系は東南アジア、緑系は北米、青系はヨーロッパを表しています。
上の表は2024年1月1日~12月31日までの1年間に函館市に訪れた訪日外国人を国別に構成比で表したものです。札幌市、小樽市と傾向としては同様で、韓国、中国、台湾、香港の東アジア勢で全体の約7割を占めています。赤色系は東南アジア、緑系は北米、青系はヨーロッパを表しています。
本記事での位置情報データはKDDI Location Analyzer で分析したものです。KDDI Location Analyzerは、KDDIやNAVITIMEの位置情報データと、技研商事インターナショナルの商圏分析ノウハウを用い開発された、Webブラウザ上で来訪者の推移や詳細を地図やグラフで自由自在に分析できる定額制のエリア分析ツール(GIS:地図情報システム)です。
KDDI Location Analyzer 訪日外国人版で利用しているビッグデータは、ナビタイムジャパンが提供する訪日外国人向け経路検索・多言語観光案内アプリ「Japan Travel by NAVITIME」から利用者の同意を得て取得したインバウンドGPSデータと属性アンケートのデータを活用しています。
本記事では訪日外国人版を利用していますが、国内の人流を分析する機能も搭載しています。
参考:KDDI Location Analyzer サービスページ https://www.giken.co.jp/service/kla/
北海道は、インバウンド需要が高まっている地域です。訪日外国人観光客数は年々増加しており、観光客の分布も広がっています。
この需要に対応するため、北海道ではさまざまなインバウンド対策が実施されています。主な項目を以下に挙げます。
• 施設内案内表示の英語対応: 外国人観光客が快適に過ごせるように、公共施設や観光施設の案内表示を英語に対応させる取り組みが進められています。
• おもてなし規格認証: 北海道の優れたおもてなしを提供する事業者を認証する制度です。認証を受けた事業者は、外国人観光客に質の高いサービスを提供することができます。
• 免税店の設置: 北海道には複数の免税店が設置されており、外国人観光客はここで免税で買い物を楽しむことができます。
• オーバーツーリズム対策: 外国人観光客の増加に伴って、オーバーツーリズムが発生する可能性があります。北海道では、オーバーツーリズム対策についても検討が進められています。
これらの取り組みを通じて、北海道はインバウンド需要の拡大に対応し、外国人観光客に満足度の高い旅行を提供することを目指しています。
北海道の施設内案内表示が英語に対応しているかどうかは、訪日外国人観光客にとって重要な問題です。主要な観光地や公共施設では英語に対応していることが多いですが、地方部や小規模な施設ではまだ英語に対応していないところも多くあります。英語対応を進めることで、訪日外国人観光客の満足度向上だけでなく、北海道の観光業全体の活性化にもつながることが期待されます。
• 主要な観光地や公共施設では英語に対応していることが多い
• 地方部や小規模な施設では、まだ英語に対応していないところが多い
• 英語対応を進めることで、訪日外国人観光客の満足度向上だけでなく、北海道の観光業全体の活性化にもつながることが期待される
北海道のおもてなし規格認証は、訪日外国人旅行者の満足度向上と、観光サービスの質向上を目的に、北海道が独自に定めた規格です。おもてなし規格認証を受けた事業者は、外国語対応やサービス内容、設備など一定の基準を満たしていると認められます。
認証を受けた事業者は、年々増加傾向にあります。2022年4月時点で、1,234事業者が認証を取得しており、2021年4月時点の994事業者から約24%増加しました。認証取得事業者の増加は、北海道におけるインバウンド対応の強化を示しています。
認証を受けた事業者は、おもてなし規格認証マークを表示することができ、訪日外国人旅行者にとって安心できる施設の目印となります。また、認証取得事業者は、北海道観光振興機構から各種支援を受けることも可能です。
おもてなし規格認証制度は、北海道のインバウンド需要拡大に貢献する重要な施策の一つとなっています。認証事業者の増加によって、訪日外国人旅行者の満足度向上と、北海道観光の魅力向上につながることが期待されます。
おもてなし規格認証の主な基準は以下のとおりです。
• 外国語対応
• サービス内容
• 設備
• 従業員の態度
• 清潔さ
• 安全性
• 環境への配慮
これらの基準を満たすことで、訪日外国人旅行者が快適に過ごすことができる環境を提供することができます。
北海道には、訪日外国人旅行者向けの免税店が40店舗あります。そのうち22店舗は札幌市に集中しており、その他の店舗は小樽市、函館市、旭川市、帯広市、釧路市にそれぞれ数店舗ずつあります。免税店では、消費税や地方消費税が免除されるため、訪日外国人旅行者にとって魅力的な買い物スポットとなっています。
2019年(コロナ前)のデータによると、北海道の免税店における売上高は約1,200億円に達しました。このうち、中国からの旅行者が約6割を占めています。新型コロナウイルスの影響で訪日外国人旅行者が激減した2020年以降は、免税店の売上高も大幅に減少しましたが、2023年に入ってからは徐々に回復傾向にあります。
北海道の免税店は、訪日外国人旅行者にとって買い物を楽しむことができるだけでなく、北海道経済にとっても重要な役割を果たしています。今後も、免税店が北海道のインバウンド需要拡大に貢献していくことが期待されます。
北海道は、豊かな自然や歴史、食文化など魅力的な観光資源が豊富なことから、訪日外国人観光客に人気の高いエリアです。2025年には、さらに多くのインバウンド需要が見込まれています。
インバウンド需要に合わせた新たな観光周遊ルートや施設の整備計画などについてご紹介します。
2025年には、以下の観光地が注目されています。
レインボールートとは、道央圏から道東圏にかけて、7つの道立自然公園や十勝岳連峰などの雄大な自然景観を巡る周遊ルートのことです。自然だけでなく、アイヌ文化や食文化など北海道の魅力を体験することができ、近年増加している訪日外国人観光客のニーズに応えるべく開発されたものです。訪日外国人観光客は、北海道の自然や食などの魅力に惹かれて訪れていますが、その一方で、交通機関や宿泊施設などの情報不足に課題を抱えている人も多くいます。レインボールートは、このような課題を解決し、訪日外国人観光客がより快適に北海道を周遊できるように整備されたルートです。
阿寒摩周国立公園の川湯温泉街では、北海道東部の屈斜路湖畔に位置する温泉街です。近年、インバウンド需要の高まりを受け、再整備計画が進められ、新しい温泉施設や宿泊施設が誕生する予定です。計画では、温泉街のシンボルである「川湯橋」の架け替えや、遊歩道の整備、温泉施設の改修などが行われる予定です。これにより、観光客にとってより魅力的な温泉街となることが期待されています。
さらに、星野リゾートが温泉街に新しいホテルを建設する計画も発表されました。このホテルは、2025年春に開業予定で、温泉街の活性化に大きく貢献するとみられています。
北海道のインバウンド需要は、新型コロナウイルスの影響で減少していましたが、2023年以降は回復傾向にあります。 北海道に訪れる訪日外国人観光客数は、2019年(コロナ前)には400万人以上でしたが、2023年には200万人強まで減少しました。 しかし、2024年には300万人台に回復し、2025年には400万人に達すると予想されています。
北海道を訪れる訪日外国人観光客の消費額も回復傾向にあります。 2019年には1兆円を超えていましたが、2023年には5,000億円程度に減少しました。 しかし、2024年には8,000億円台に回復し、2025年には1兆円に達すると予想されています。
北海道のインバウンド需要は、今後も回復傾向が続くと予想されています。 北海道は、魅力的な観光資源を多く有しており、訪日外国人観光客にとって魅力的な観光地となっています。 北海道は、今後もインバウンド需要の拡大に向けて、様々な取り組みを行っていく必要があります。
タイムリーで鮮度の高い訪日外国人のデータとして、位置情報データとそれを搭載したGIS(地図情報システム)の活用もまた有効です。
本コラムで活用した訪日外国人の人流分析ツール「KDDI Location Analyzer(訪日外国人版)Powered by NAVITIME」は、2週間の無料トライアルが可能です。
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監修者プロフィール市川 史祥技研商事インターナショナル株式会社 執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント |
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医療経営士/介護福祉経営士 流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師 一般社団法人LBMA Japan 理事 1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。 |