技研商事インターナショナル技研商事インターナショナル
エリアマーケティングラボ
2024年12月19日号(Vol.121)
エリアマーケティングとは、地域の特性に応じて行うマーケティング手法のことです。対象エリアごとの生活様式、交通インフラ、住民の年代、行動様式などの特性を調査・分析したうえで、地域ごとに最適化した施策を実施します。
エリアマーケティングは調査・分析がメインといえるほど重要となります。この調査・分析をしっかりと行うことができれば、地域ごとに最適化した戦略をとることができ、さらには売上や成約といった成果の最大化を狙えるでしょう。
本記事ではエリアマーケティングの目的、成功事例、手順、成功のポイントを分かりやすく解説し、さらに小田急電鉄株式会社様やキリンビール株式会社様など、実際に当社がご支援した企業様の事例も5つご紹介します。エリアマーケティングを成功させるためのヒントをぜひ見つけてください!
エリアマーケティングを行うことで、根拠をもとに新規出店時の候補地選定を適切に行うことができたり、特定のエリアの需要や売上予測を立てやすくなったりします。ここからは、エリアマーケティングを行う目的について解説します。
まず何よりも先に、自社の現状を把握することが重要です。具体的には、自社の強み・弱み、エリア内での競合状況、エリア内の顧客ニーズなどを確認する必要があります。
そしてそれらの情報が、ターゲットとなりうるエリアの特性と限りなく近いものであれば、売上や利益の最大化が期待できるはずです。
詳細な項目別に分析することで、自社の強みを生かしつつ、エリア内の競合他社に差をつけることができます。
また、顧客のニーズを把握することで、より効果的なマーケティング施策を立案することができるでしょう。
特定のエリア内での需要や売上の予測結果は、商品の販売戦略やマーケティング活動に必要不可欠な情報となります。
具体的には、エリア内の人口動態、消費行動、競合状況、経済状況、のような情報を用いて需要や売上を予測することができます。
エリア内での顧客ニーズや生活スタイル、購買行動などを分析することで、より効果的なマーケティング施策を展開することが可能となります。
顧客分析に活かせるデータとして、例えば以下のようなものがあります。
• 人口構成: 性別、年齢、世帯構成、収入などのデータ
• 生活スタイル: ライフステージ、趣味・嗜好、ライフスタイル
• 購買行動: 購買頻度、購買チャネル、購買動機、購買金額
• 競合他社: エリア内の競合他社の分析
• 顧客満足度: 顧客アンケート調査、SNS分析
顧客分析には、様々な手法が用いられます。
• 定量分析: 人口統計データや購買履歴データなどの数値データを用いた分析
• 定性分析: 顧客インタビューやアンケート調査など、顧客の意見や心情を分析
• 統計分析: 標本調査データに基づき、母集団の推計を行う
• GIS分析: 地理情報システムを用いて、顧客分布や購買行動などを可視化
商圏とは、自社の商品やサービスを購入する可能性の高い顧客がいる地域のことです。商圏を正確に把握することで、より効果的なマーケティング戦略を立てることができます。
最適な商圏を特定することで、自社店舗や商品の魅力を最短距離でターゲット層に訴求することができます。
▼ 最適な商圏を特定するための方法やポイントはこちら
顧客にリーチするための効果的な広告戦略の立案は不可欠です。戦略立案のためには、対象となるエリアの特性や顧客ニーズを把握することが重要です。また、競合他社の動向も分析し、差別化を図る必要があります。
▼エリアマーケティングにおける広告戦略立案のポイント
約70にのぼるグループ会社からなる小田急電鉄株式会社様は、東京、神奈川エリアを中心に、運輸、不動産、流通、ホテル、外食など様々な事業を展開されています。グループ全体の多岐に渡る調査研究業務を担う小田急総合研究所では、人流分析ツール「KDDI Location Analyzer」を使って国内居住者やインバウンドの人流分析を行っています。
【課題】
・ 元々人流系の調査は、その都度分析に必要なデータを購入して行っていたが、コストが高いことがネックとなっていた。
・ 国勢調査などの数年に1度更新される公的統計データは、信頼性はあるがタイムリー性に欠けていた。
→フレキシブルに活用できる人流データ・人流分析ツールを探していた。
【人流分析ツール活用後】
・ サブスク形式の人流分析ツールで人流データをいつでも何度でも取得でき、幅広い調査ができるようになった。
・ 最短3日前の人流データが取れるため、タイムリーな人の流れを調査できるようになった。
交通事業、不動産事業、生活サービス事業、ホテル・リゾート事業など、生活に密着した様々な事業を幅広く展開している東急グループ。グループ全体の位置情報分析を担う東急株式会社 デジタルプラットフォーム マーケティンググループでは、KDDI Location Analyzerを活用した位置情報分析を行ってらっしゃいます。
【課題】
・ 東急グループの会員データやポイントデータだけでは、顧客や施設全体、新店開発エリアの深堀分析をしていくことが困難だと感じていた。
【KDDI Location Analyzer導入後】
・ 都度レポートを外注するのではなく、サブスク型の位置情報分析ツールを導入したことで、複数部署の分析を行う際も、1つの分析を深掘っていく際も、費用や時間を気にせずにできた。
・ 東急グループの施設はもちろん、競合施設の商圏範囲や来訪者全体の属性が分かり、モールや店舗、エリアの開発時の参考になった。
・ 店舗周辺の人の流れについて、今までは感覚値で話していたような部分が、明確に数値として証明されることが、店舗開発担当の際非常に役立っている。
東京都、埼玉県、千葉県にて60以上の店舗(2023年12月時点)を展開されているスーパーマーケット、東武ストア様。商圏分析ツール「MarketAnalyzerⓇ 5」と人流分析ツール「KDDI Location Analyzer」を活用され、公的統計と位置情報を活用したエリアマーケティングに取り組まれています。
【課題】
・ 商圏分析に必要なデータを一から自分で探して収集するのに時間がかかっていた。
・ “競合店舗のデータ”が分からないため、客観的なデータで競合の動向を把握するのが困難だった。
【当社ご支援後】
・ MarketAnalyzerⓇ 5を使用して、簡単な操作ですぐに商圏データを得られるようになった。さらに商圏レポートをExcel出力でき、そのまま会議資料として使えるので、分析や社内報告の業務においてかなりの時間短縮につながった。
・ KDDI Location Analyzerの活用で、通行人口や滞在人口のボリュームだけでなく性・年代別等の属性も把握できるようになった。何より、今まで分からなかった“競合のデータ”が取れることで、客観的かつ新鮮なデータで競合の動向をリアルに把握できるようになったのが良かった。
同社のマーケティング本部・営業開発室では、技研商事インターナショナルの商圏分析システム(MarketAnalyzerシリーズ)をベースに、キリンビール社向けにカスタマイズを行った独自システムを活用されています。
最終的に商品を取る顧客をよく知り、取引先の課題を共に解決し、さらに売上向上につなげるため。その手段としてご活用いただいています。
【課題】
・ 元々使用していた商圏分析システムは改修の柔軟性に欠き、あまり使用されていなかったため、商圏分析データ自体の存在価値が疑われかねない状況だった。
・ 高度な分析を行う分析担当と現場営業担当でそれぞれ異なる活用スタイルを持つ、キリンビール社特有の使い方に合う代替システムを求めていた。
【当社ご支援後】
・ ベースとなる「MarketAnalyzerシリーズ」の機能の充実度と、キリンビール社向けに独自のカスタマイズ開発を行うという技研商事インターナショナルの提案により、妥協せずにシステムを作り上げることができた。
・ 現場の営業からはシステムの使いやすさや、取引先向けのレポート作成の手間が省けることなどが評価されている。
自店舗(既存店舗・新規出店予定店舗)の商圏となるエリアがどの程度の範囲になるのかを確認します。
※商圏とは:特定の店舗を日常的に利用する消費者の在住エリアや、店舗への来訪が見込めるエリアのことを指す言葉です。
商圏エリアは自店舗を中心に円を描く形になるのが一般的です。コンビニのように店舗数が多く、自宅や駅から近い店を利用する顧客が多い業種の場合は範囲が狭くなります。一方で、ブランドショップや百貨店など、遠方からも顧客が訪れるような業種は範囲が広くなります。
国勢調査などの公的データを搭載している商圏分析ツール(GIS)や、スマートフォンなどから得られる位置情報を使用した人流分析ツール、その他さまざまなでデータを使用し、商圏分析を実施します。分析する項目は、人口構成、昼夜間人口差、地域特性、世帯数、学生数、高齢者数などです。
※商圏分析とは?詳しい説明はこちら
当社が推奨する分析用のツールは、以下の2つです。
商圏エリア内の競合企業を分析します。競合の強みは何か、自店舗はどのような点で優位性をもてるかを分析し、地域の人口や特性といった情報とすり合わせます。
事前に分析した情報をもとに、各地域の特性に合わせたマーケティング施策を実施します。
チラシの配布やポスティング、SNSなどのインターネット上で広告掲載、定期的な顧客へのアンケートなどが例として挙げられます。
マーケティングにおいてPDCAサイクルを回すことは不可欠です。PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったもので、エリアマーケティングの施策を効果的に進めるための重要なフレームワークです。
PDCAサイクルを回すためには、以下のようなステップが必要です。
・ 目標の設定
・ 施策の立案
・ 施策の実行
・ 結果の評価
・ 改善策の検討
これらのステップを繰り返し行うことで、エリアマーケティングの施策を効果的に進め、成功に導くことができます。
▼ PDCAサイクルを回す際のポイント
・ 目標は具体的に設定する
・ 施策は目標達成のために効果的なものを選ぶ
・ 施策の実行は計画通りに進める
・ 結果は正確に評価する
・ 改善策は迅速に実行する
【 エリアマーケティングにおけるPDCAの例 】
1. 商圏分析ツールを使って、自社の顧客と似た層が多く居住するエリアを特定する。
2. 1.で特定したエリアの人口、世帯年収など基本的な情報や、購買意欲などの生活意識情報を分析し、
特定したエリアの中でもどんな人にターゲットを絞るのか計画を立てる。
3. 対象エリア内にいる該当するターゲット層の人にセグメントを絞り、WEB広告を配信する。
4. 年齢別やエリア別で広告のクリック率やコンバージョン率がどのように差異があるか、
広告の費用対効果がどうだったのかレポートを作成し、振り返りを行う。
5. 4.の結果を元に、効果の高かったエリアに別のクリエイティブで広告配信を行う。
地域特性を把握し、顧客ニーズに応えることで、エリアマーケティングの成功率を上げることができます。
地域特性を把握するためには、以下の項目を特に分析することが重要です。
ターゲットとなる地域に住む顧客のニーズを理解することも重要です。顧客ニーズを把握することで、顧客が求めている商品やサービスを提供することができ、顧客満足度を高めることができるからです。
顧客ニーズを把握するための方法としては、以下のものが挙げられます。
競合他社がどのようなエリアで事業を展開しているのか、どのような施策を行っているのかを知ることで、自社の戦略を立てやすくなります。
競合他社の動向を把握する方法はいくつかあります。例えば、競合他社のホームページや広報資料を確認したり、業界誌や新聞記事を読むことで情報を得ることができます。
また、競合他社の販売店やイベントに参加して、直接情報を収集することも有効です。
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監修者プロフィール市川 史祥技研商事インターナショナル株式会社 執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント |
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医療経営士/介護福祉経営士 流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師 一般社団法人LBMA Japan 理事 1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。 |