エリアマーケティングラボ

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顧客分析に役立つABC分析とは|活用例・パレート図の作成手順も解説

2025年3月18日号(Vol.135)

はじめに

ABC分析は、顧客や商品をランク付けし、重要な部分を把握するための強力な分析手法です。 顧客の売上や利益への貢献度、商品の売上や在庫回転率などを分析することで、経営資源をどこに集中すべきか明確化します。
ABC分析は、売上向上と商品戦略のマーケティング、顧客重視のフォローアップ戦略の構築、在庫管理とコスト最適化、商圏分析・エリアマーケティングなど、お客様分析に役立つ様々な活用方法があります。
顧客分析に役立つ強力なツールなので、 本記事で紹介した内容を参考に、ぜひ自社の状況に合わせて活用してみてください。


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ABC分析とは

ABC分析は、顧客を価値に応じて分類し、最も重要な顧客にリソースを集中することを可能にする強力なツールです。
ABC分析は、顧客を価値に応じて3つのグループに分類します。これは、20%の顧客が80%の売上を占めるという「パレートの法則」に基づいています。
分析の手順としては、まず顧客や商品を売上や利益などの指標に基づいてランク付けし、上位20%をAグループ、次位30%をBグループ、残りの50%をCグループに分類します。

• Aグループ:最も価値の高い顧客。収益の約80%を占める。
• Bグループ:中間層の顧客。収益の約15%を占める。
• Cグループ:価値の低い顧客。収益の約5%を占める。

各グループの特徴を把握することで、効果的なマーケティング戦略を立案できます。 Aグループには重点的なフォローアップを行い、Bグループには効率的な対応を心がけ、Cグループは必要最低限の対応に留めるなど、グループごとに最適なアプローチが可能です。

ABC分析は、以下のメリットがあります。

• 顧客への理解を深める:顧客を価値に応じて分類することで、それぞれのグループのニーズや特徴を明確に理解することができます。
• マーケティング戦略を最適化:顧客の価値に応じてマーケティング戦略を調整することで、より効果的なマーケティング活動を行うことができます。
• リソースの効率化:最も価値の高い顧客にリソースを集中することで、マーケティング活動の効率を向上させることができます。


パレートの法則とは

パレートの法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した法則で、全体の数値の大部分は、全体の要素のうちの僅かな一部によって生み出されているというものです。

【パレートの法則の例】
 売上の8割は、全従業員のうちの2割の従業員で出している
 売上の8割は、全体の2割の顧客が出している
 仕事の成果の8割は、時間全体の2割の時間で出している
 機械の故障の8割は、全部品のうち2割の部品に原因がある



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ABC分析の手順

ここからはABC分析の手順についてより具体的に解説していきます。
ABC分析は、以下の手順で実施します。

1. 顧客データを収集する:顧客データには、顧客名、売上高、利益率、購入頻度、顧客属性などがある。
2. 分類指標を決める:分類指標は、売上高、利益率、購入頻度など、分析目的に応じて選択する。
3. 顧客を分類する:分類指標に基づいて、顧客をA、B、Cの3つのグループに分類する。
 • Aグループ: 上位20%の顧客。売上高や利益率が高い顧客。
 • Bグループ: 中間40%の顧客。売上高や利益率はAグループより低く、Cグループより高い顧客。
 • Cグループ: 下位40%の顧客。売上高や利益率は、AグループとBグループよりも低い。
4. 累計構成比を計算する:分類指標の累計構成比を計算する。
5. パレート図を作成する:累計構成比を棒グラフで表した図を作成する。

累計構成比の計算と意義

累計構成比とは、ある時点までのデータの合計値を、全体のデータの合計値で割った割合のことです。ABC分析では、売上高や顧客数などのデータを累積的に足し上げ、その累計値を全体のデータの合計値で割って、それぞれのランクの構成比を計算します。

パレート図の作成手順と解説

パレート図の分析イメージ

縦軸と横軸の設定
パレート図は、縦軸に度数または構成比、横軸に項目名をとった棒グラフです。縦軸は、度数または累積構成比のいずれかを選択できます。度数を使用すると、各項目の出現頻度を示すことができます。累積構成比を使用すると、上位項目の重要度を視覚的に表現することができます。横軸には、分析対象の項目名を順番に並べていきます。

棒グラフと累積構成曲線の作成
縦軸と横軸を設定したら、各項目の値を棒グラフで表します。棒グラフは、縦軸の目盛りに合わせて高さ調整します。次に、累積構成比を累積構成曲線としてグラフ上に描きます。累積構成曲線は、左下の原点から始めて、各項目の累積構成比の値を線で結んでいきます。


ABC分析をするうえで注意するポイント

ABC分析は顧客分析に役立つ手法ですが、分析結果を正しく解釈するためにはいくつかの留意点が必要です。

 1. 一過性の増減に惑わされない
 2. 優先度だけでの判断は避ける
 3. ECショップと実店舗の違いを理解する
これらの点に留意することで、ABC分析をより効果的に活用することができます。

以下、各項目についてもう少し詳しく説明します。

季節要因など一過性の増減に注意

ABC分析は顧客分析に役立つ手法ですが、分析結果を正しく解釈するためにはいくつかの留意点が必要です。
その1つは、季節要因やキャンペーンなどの一過性の増減に注意することです。季節要因などによって一時的に売上が増減する商品がある場合、それらを上位グループに分類してしまうと、本来注力すべき商品を見逃してしまう可能性があります。
例えば、夏場にアイスクリームの売上が高くなるのは当然ですが、これをABC分析の結果だけで重要度が高いと判断するのは誤りです。季節要因やキャンペーンなどの影響を除外した上で分析を行う必要があります。

優先度だけでの判断は避ける

ABC分析において、優先度だけで顧客を分類し、対応を決定してしまうのは危険です。なぜなら、優先度の高い顧客が必ずしも利益をもたらすとは限らないからです。
例えば、Aランクの顧客であっても、購入頻度が高くても単価が安い場合、利益率は低くなる可能性があります。
また、Aランクの顧客が、クレームや返品が多い場合、対応コストがかさんで利益を圧迫する可能性があります。
さらに、Aランクの顧客が、競合他社に乗り換えやすい場合、突然顧客を失うリスクがあります。
そのため、ABC分析の結果を鵜呑みにするのではなく、各顧客の特性や収益性などを総合的に判断することが重要です。具体的には、顧客の購買単価や利益率、顧客のロイヤルティや継続購入率、顧客のクレームや返品率、顧客の競合他社への流出リスクなどに着目する必要があります。

ECショップと実店舗の違いを理解する

ABC分析は、実店舗だけでなく、ECショップにも適用することができます。 しかし、ECショップと実店舗では顧客の行動パターンが異なるため、分析方法を調整する必要があります。 例えば、ECショップでは、購買履歴だけでなく、閲覧履歴やカート放棄率なども分析指標として取り入れるべきです。


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ABC分析の具体的な活用事例

ABC分析は、顧客分析だけでなく、様々な場面で活用することができます。ABC分析によって得られた顧客の分類に基づいて、より効果的なマーケティング戦略や顧客対応を行うことができます。

売上向上と商品戦略のマーケティング手法

ABC分析は、商品戦略のマーケティング手法としても利用されています。
商品も顧客分析の際と同様に、売上の大きさや利益率によってA、B、Cの3つのランクに分類されます。
Aランク商品は売上の規模が大きく、利益率も高いです。Bランク商品は売上の規模が中程度で、利益率も中程度です。Cランク商品は売上の規模が小さく、利益率も低いです。
Aランクの商品は利益率が高いため、引き続き注力すべき商品です。一方、Cランクの商品は利益率が低いため、見直しや廃止を検討する必要があります。
ABC分析を活用することで、顧客のニーズに合わせた商品やサービスを開発し、効率的なマーケティング施策を実施することができます。結果として、売上向上と事業の成長に貢献することが期待されます。

顧客重視のフォローアップ戦略の構築

顧客分析に役立つABC分析とは、顧客を優良顧客、中間顧客、一般顧客の3つのグループに分類し、それぞれに最適なフォローアップ戦略を構築することで、顧客満足度の向上や売上アップを目指す手法です。
ABC分析を活用することで、顧客の特性に応じた効率的なフォローアップが可能となり、顧客ロイヤルティの強化、売上拡大、経営効率の改善など、様々なメリットを得ることができます。

在庫管理とコスト最適化のための手法

ABC分析は、在庫管理とコスト最適化のためにも有効な手法です。在庫の中でも特に重要なAランクの商品は、厳密な管理を行うことでロスを防ぎ、効率的な在庫管理を実現することができます。また、Cランクの商品は在庫コストを抑えるために、発注ロットの調整や仕入れ先の変更などを検討することが可能です。



商圏分析・エリアマーケティングにおけるABC分析

顧客分析手法の一つであるABC分析は、商圏分析やエリアマーケティングでも活用できます。エリアごとの売上や来店者を、上位顧客層(A)、中間顧客層(B)、下位顧客層(C)の3つに分類し、それぞれの層の特徴を分析することで、より効果的なマーケティング戦略を立案することが可能になります。

<ABC分析の具体例>
• スーパーマーケット
商圏内の各エリアにおける顧客の購買データをもとに、ABC分析を実施し、各エリアの顧客層を把握します。A層が多いエリアには、高価格帯の商品やサービスを展開し、B層が多いエリアには、中価格帯の商品やサービスを展開するなどの戦略を立てることができます。
• ドラッグストア
商圏内の各エリアにおける来店者の属性データをもとに、ABC分析を実施し、各エリアの来店者の特徴を把握します。A層が多いエリアには、女性向けの商品やサービスを展開し、B層が多いエリアには、男性向けの商品やサービスを展開するなどの戦略を立てることができます。



GIS(地理情報システム)でのABC分析手法

GIS(地理情報システム)とABC分析を組み合わせることで、顧客の分布や購買行動を地域別に分析することができます。

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例えば、小売店であれば、顧客の住所や購買履歴データをGIS上にマッピングすることで、どの地域に多くの人が住んでいて、どの地域でどの商品が売れているのかを視覚的に把握することができます。この情報は、店舗の立地選定や品揃えの最適化に役立てることができます。
また、マーケティング活動においても、ターゲットとなる顧客層が集中している地域を絞り込むことで、より効果的な施策を展開することができます。

以下は、GISでのABC分析手法における具体的な活用例です。

• 顧客の分布分析
顧客の住所データをGIS上にマッピングすることで、顧客がどの地域に集中しているのかを視覚的に把握することができる。
• 購買行動分析
顧客の購買履歴データをGIS上にマッピングすることで、どの地域でどの商品が売れているのかを視覚的に把握することができる。
• 競合分析
競合店の位置情報をGIS上にマッピングすることで、競合店の分布や商圏を分析することができる。
• マーケティング活動
GISで分析した情報をもとに、ターゲットとなる顧客層が集中している地域を絞り込むことで、より効果的なマーケティング施策を展開することができる。

以上のように、GISとABC分析を組み合わせることで、より高度な顧客分析が可能になります。この手法は、さまざまな業界で活用されており、今後もますます重要性が高まっていくと考えられます。



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まとめ

ABC分析は、顧客分析において重要な手法です。顧客の重要度を可視化し、経営資源を効率的に配分することで、企業の業績向上に貢献することができます。
顧客分析においては、顧客を売上げや利益という観点から重要度別に分類し、上位層(Aランク)に重点的に資源を配分することで、効率的な経営を実現することができます。
ABC分析とGISをうまく活用することで、顧客分析の精度向上と効率化が期待できるはずです。


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監修者プロフィール

市川 史祥
技研商事インターナショナル株式会社
執行役員 マーケティング部 部長 シニアコンサルタント
医療経営士/介護福祉経営士
流通経済大学客員講師/共栄大学客員講師
一般社団法人LBMA Japan 理事

1972年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。不動産業、出版社を経て2002年より技研商事インターナショナルに所属。 小売・飲食・メーカー・サービス業などのクライアントへGIS(地図情報システム)の運用支援・エリアマーケティング支援を行っている。わかりやすいセミナーが定評。年間講演実績90回以上。




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